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整形外科

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・整形外科

(1)当院の整形外科について

整形外科の病気は、骨折や関節、筋肉や腱の疾患など、たくさんのものがあります。また、先天的な異常や幼少期から発症する病気もあります。
そのため、日常から歩き方や姿勢などを観察しておくことが重要です。整形外科の病気は、発症してから早期に診断や治療を行うことで悪化を防ぐことも可能です。犬や猫でよく診察するのが、骨折のほか、脱臼をはじめとする関節系の疾患、椎間板ヘルニアなどの疾患です。
気になる症状があれば当院へご相談にお越しください。

代表的な症例
膝蓋骨脱臼、前十字靭帯断裂 骨折、関節リウマチ、変形性関節症、椎間板ヘルニア

(2)よくある症例と原因について

【膝蓋骨脱臼】
原因と症状

膝蓋骨(膝にある皿のような骨)が正常な位置から内側、または外側に外れてしまう状態をいいます。先天的に膝関節や膝関節周囲の形態に異常がある場合や、後天的に外傷や骨に関連する栄養障害などがあることが原因となります。膝蓋骨を英語でパテラということから、膝蓋骨脱臼を「パテラ」とも呼びます。小型のワンちゃんでは、膝蓋骨の内側への脱臼(内方脱臼)が多くみられます。大型のワンちゃんでは内方脱臼もみられますが、膝蓋骨の外側への脱臼(外方脱臼)も比較的多くみられます。ネコちゃんの膝蓋骨脱臼では内方脱臼が多いようですが、ネコちゃんの膝蓋骨脱臼はワンちゃんほど一般的ではありません。
「足を急に挙げてスキップのような歩き方をする。その後ひとりでに良くなる」というのが膝蓋骨脱臼で最もよく気づかれる症状です。膝蓋骨が大腿骨の溝から脱臼することによって骨同士がこすれ合う痛みや違和感で足をあげますが、しばらくすると元の位置に戻って足も正常に戻ることが多いです。後ろ足を伸ばして自分で元の位置にに戻そうとする犬もよくいます。このような症状は比較的軽い状態の時期にみられ、時間の経過とともに減少していくことが多いです。
しかし実は膝蓋骨脱臼は良化しておらず常に脱臼した状態に悪化していることが殆どです。

<多い犬種>

ポメラニアン、トイ・プードル、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、チワワ、パピヨン、柴犬など

<グレード>

膝蓋骨の脱臼は4段階に評価されます。
グレード1 普段は脱臼していないが指で押すと脱臼する
グレード2 時々自発的に脱臼し、足を挙上したりスキップのような歩き方をするが、自然に戻る
グレード3 常に脱臼しており足を挙げることは少ないが、膝の伸展機能が低下している。指で正しい位置に戻すことは可能であるがすぐに脱臼する
グレード4 常に脱臼しており正しい位置に戻すことができない。筋肉の短縮が進行し膝の伸展機能は著しく低下している。

<診断>

基本的な診断には整形外科的な触診と、レントゲン検査が必要です。整形外科的な触診検査を行って膝蓋骨脱臼の程度を評価し、同時に他の運動器疾患が無いかを確認します。レントゲン検査は正確に行われ、骨の形状などを手術方法の決定のために詳細に評価する必要があります。

<治療法>

(外科治療)
基本的には外科的治療でしか完治はしません。グレード2以上は手術の適応になります。膝蓋骨脱臼の治療には、骨の形態的な異常、周りの軟部組織の異常、筋肉の異常などを総合的に矯正をしていかなければなりません。 その異常の程度は様々で、矯正が必要な場所、方法はそれぞれ異なります。それゆえ手術の方法は慎重な検査のもと決定しなければなりません。通常この手術に慣れてる外科医が手術をすれば90%以上は術前より改善します。

(保存的治療)
減量、滑らない床、段差の少ない環境、ボール運動の禁止などは膝蓋骨脱臼の軽減に役立ちますが、これだけでは改善しない事が殆どです。しかし外科治療と同時にこのような環境の整備を行うことは重要となります。

膝蓋骨脱臼の治療はこの先の歩行機能を守ることです。膝蓋骨内方脱臼の最も重要な弊害は、大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯のすべてが異常な位置に移動し、徐々に後ろ足が正常な運動機能を損なうことです。 つまり逆にいうと早い時期に治療することで筋肉や骨の変化を最小限にすることができ、治療の成功率も上がります。特にかなり若い時期での脱臼は骨の変形も伴うので、早期の治療が重要です。


【前十字靭帯断裂】
原因と症状

前十字靭帯断裂は犬の整形外科疾患の中で最も多い疾患です。多くは大型犬から中型犬に発生しますが、小型犬でも発症することがよくあります。前十字靭帯断裂は人ではスポーツ選手がよく練習や競技中に損傷を受けますが、動物では外傷よりも徐々に靭帯が変性(元に戻ることのできない変化、劣化)しロープが切れるようにダメージを受けていくことが多く見られ、多くの犬で両足の靭帯が切れてしまいます。それゆえ最近は前十字靭帯疾患とも呼ばれています。初期の段階はごく軽度の跛行、お座りが完全にできないで足を投げ出す、段差を躊躇するなどの軽い症状ですが、その症状が完治せずに続きます。この時期には前十字靭帯の線維の一部が断裂し膝関節で滑膜炎が進行していきますが、完全に診断できないことが多くあります。そしてそのうち前十字靭帯の半分ほどが断裂すると明らかな跛行を繰り返し、鎮痛消炎剤などに反応しないことが多くなります。この段階では関節の緩みが認められ関節炎が徐々に進行しています。前十字靭帯が完全に断裂すると、犬は大抵後ろ足を完全に挙上するほどの症状を出します。場合によっては膝からクリック音が聞こえ、これは半月板が損傷している可能性があります。前十字靭帯断裂の診断には、整形外科的触診による膝関節の不安定、膝関節の腫れ、関節液の貯留、レントゲン検査などの所見で総合的に判断し、最終的に関節鏡、関節切開などで直接目視する必要があります。MRIや超音波検査も診断に役立ちます。
治療方法は外科治療が第一選択です。膝の不安定性は外科手術でのみ治療することができ、早期に治療することで関節炎の進行を遅くすることができます。しかし他の疾患による二次的な十字靭帯断裂、全身状態の不安、年齢などを考慮して保存的治療やリハビリテーションでの治療を行うこともあります。

<多い犬種>

ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、バーニーズマウンテンドッグ、ジャックラッセルテリア、トイプードル、ヨークシャテリアなど

<治療法>

(関節外安定化術)
関節の外に人工の靭帯を設置する手術法です。
関節外法は比較的安価で手術手技が容易である一方で、糸の緩みが早期に起こるという合併症が多いため、これに代わる手術が現在も開発研究されています。

(脛骨骨切り術)
脛骨骨切り術は脛骨の角度を調節することにより膝関節にかかる筋肉の力を変化させて前十字靭帯断裂により引き起こされる脛骨の前方変位を中和し、膝を安定させるというコンセプトの治療方法です。この方法も多くの手技が開発されており現在も研究が続けられています。その中でもTPLO(脛骨高平部骨切り術)とTTA(脛骨結節前進化術)が最も多く行われている方法です。これらの手技は関節外法と比較して、安定度や回復のスピードが優れているとされています。


【骨折】
<原因と症状>

高いところやソファから飛び降りたとき、階段からの落下・フローリングでの転倒、飼い主さんが誤って踏んでしまう、散歩や公園・ドッグランなどで遊んでいる際など日常の中で骨折をしてしまうことがあります。 肢を挙げる、肢をひきずる、元気や食欲がなくなっている、トイレがうまくできない、などの行動が見られたら骨折の可能性があります。前肢、下顎、肋骨、後肢、胸椎、頚椎、脛骨、尾骨、背骨、頭蓋骨などが好発部位です。

<多い犬種>

イタリアン・グレーハウンド、トイプードル、ポメラニアン、パピヨン、マルチーズ、ミニチュア・ピンシャーなど

<治療法>

骨折時の治療法は主にピンやプレートで直接固定する「ピン・プレート固定法」、外側からピンで固定する「創外固定法」、手術なしのギプスで固定する「外副子固定法」があります。


【免疫介在性多発性関節炎】
<原因と症状>

自分の免疫の異常によって起こる完治の難しい関節炎です。原因は正確には分かっていませんが、自己免疫疾患だと考えられています。 レントゲンで骨が溶けたように見える「びらん性」の関節炎と、そのような変化を起こさない「非びらん性」の関節炎があります。発熱、食欲不振、ぎこちなく歩く、べた足(本来地面に着かない手首やかかとが地面に着いた状態)歩行などが見られます。

<多い犬種>

ミニチュア・ダックス、チワワ、トイ・プードル、シェットランド・シープドッグなど

<治療法>

炎症の緩和、免疫バランスの調整を目的として副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を使用します。 非びらん性の関節炎(大半が特発性多発性関節炎)はこの治療に反応が良く、長期間痛みのコントロールができる場合が多いですが、びらん性の関節炎(関節リウマチ)の場合、改善はあるものの、数年かけて症状が徐々に進行する場合が多いです。


【変形性関節症】
<原因と症状>

変形性関節症は、関節の軟骨と周囲の組織が、さまざまな要因で損傷し、痛みや関節の腫れ、こわばりなどが続き、関節が変形していく関節疾患です。 繰り返される運動の刺激や老化、肥満による関節への過負荷、関節の不安定性不安定などが原因となり、高齢犬によくみられます。

<多い犬種>

ゴールデンレトリバー、ラブラドルレトリバーなど

<治療法>

外科的治療などを行いますが、加齢性で起こっている変形性関節症を完治させる治療法はなく、消炎鎮痛剤の投与やレーザー療法などによる痛みの管理が主な治療となります。また、自宅では体重管理や運動制限などのケア、理学療法、冷湿布・温湿布、入浴、痛みを抑えるのを助けるサプリメントの投与などを行います。


【椎間板ヘルニア】

椎間板ヘルニアは神経疾患です。

<原因と症状>

背骨(脊椎)の骨と骨をつなぐ椎間板が飛び出してしまう疾患です。脊髄を圧迫するため痛みが生じ、場合によっては神経麻痺を起こすこともあります。ダックスフンド、ペキニーズ、ビーグルなどの犬種で多く発症するといわれています。

●痛みだけの場合(グレード1)
脊髄の圧迫が軽度の場合は麻痺の症状がなく、痛みだけがみられます。よく見られる症状としては抱っこしたときに痛みでキャンと鳴く、段差の上り下りを嫌がる、背中を丸めるなどがあります。基本的には安静にすることとお薬での治療が中心になります。非ステロイド性消炎鎮痛薬が使用されることが多いです。

●軽度の麻痺(グレード2)
足の力が弱くなり、足先の感覚が鈍くなりますがまだ自力で立ち上がり歩くことが出来る状態です。グレード1の症状に加えて、歩くときにふらつく、足先がひっくり返るなどの症状が見られるようになります。麻痺の症状は胸部や腰のヘルニアの場合は後ろ足だけ、首のヘルニアの場合には前足にも現れます。お薬で治療することで麻痺の症状が軽減することも多いです。

●重度の麻痺(グレード3~5)
脊髄の圧迫が重度になると、麻痺が強くなり立ち上がることができなくなります。また、足だけでなく膀胱や肛門の機能も障害されておしっこが出せなくなったり、ウンチを漏らしてしまうこともあります。内科治療で回復することもありますが、手術が必要になる場合が多くなります。手術では脊髄が圧迫を受けている部分の背骨を削って窓を作り、圧迫を取り除く処置を行います。

また、合併症として進行性脊髄軟化症という病気があります。障害を受けた場所から背中の神経が壊死して広がっていき、最終的には呼吸など生命維持に必要な機能が障害され、生命にかかわることがあります。椎間板ヘルニアの5%前後で発症するといわれてます。進行性脊髄軟化症はステロイドの投与や、外科手術など様々な治療法が行われていますが今のところ有効な治療法は分かっておらず、痛みなどに対する緩和治療が中心になります。

ソファーや階段や段差の登り降り、フローリングなどの滑りやすい床材は避ける、足の裏の毛が伸びてくるワンちゃんは滑らないようにするために足の裏の毛を短くカットする、ジャンプや過度な運動をさせないなど、日常生活での注意が重要です。肥満は椎間板ヘルニアの発症率を高くする要因となるので注意が必要です。肥満にならないように日頃からこまめな体重管理を心がけましょう。

(3)当院の整形外科の診断の流れについて

整形外科においては、歩き方や関節の曲がり方などの見た目に分かる症状もあります。また、犬種によりなりやすい病気もあります。まずはどういった症状が現れているかの問診を行い、歩様検査、触診、レントゲン検査等の詳細な検査を進めていきます。

  1. 触診(全体の状況を把握)
  2. レントゲン(詳細に検査)
  3. 外科手術(症状に応じ対応)

(4)当院の整形外科の治療法・手術について

当院では症状に応じて投薬療法・外科療法を行っております。
中心となる治療法は外科手術です。当院では細かな作業に対応できるSynthes社製電気ドライバー・ドリルを使用して精度の高い外科手術を行います。必要に応じて整形外科専門病院への紹介も行っております。

(5)治療・手術後に日常生活で気を付けること

手術治療が行われた場合、術後の管理がとても重要となります。
術後は安静にさせましょう。
整形外科は折れた骨をプレートなどで固定する方法以外にも、骨を切って正しく治癒するように意図的に骨を切ったりします。意図的に切った骨は治癒するのに約2、3ヶ月の時間を要すると言われています。
骨が適切に治癒するまでは、金属の板と金属のネジでいわゆる仮止めをしている状態なので、その状態で強い力がかかると簡単に曲がったり、折れたり、ネジが緩んだりしてしまいます。ケージに入れて安静にさせる(ケージレスト)ようにしましょう。

  • 激しい運動は避けること
  • 安静・清潔を保つこと
  • 処方したお薬は必ず飲むこと

これらを必ず守ってください。